やさしい日本語で古民家の魅力を発信
日本女子大学 家政学部 住居学科 薬袋奈美子研究室

日本女子大学家政学部住居学科 薬袋奈美子 教授

今回は、日本女子大学の薬袋(みない)研究室のみなさんにお話を伺いました。

薬袋研究室との出会いは「学生が、やさしい日本語に翻訳した冊子の添削をして欲しい」という薬袋奈美子教授からのご依頼でした。

薬袋研究室では「住居学」という街づくりに関する研究をされているとのことで、
やさしい日本語に取り組むダンクとしては、興味がつきないテーマです。

今後のやさしい日本語を考えたとき、街や地域というカテゴリーの中で、どのようにやさしい日本語を活用していくのか、浸透していくのかは重要なテーマのひとつと考えているからです。

ぜひ専門家のお話を伺いたいと思い取材を申し込んだところ、ありがたいことに快諾していただきました。

日本女子大学家政学部キャンパス

街づくりとやさしい日本語、この2つにどのような関係性があるのか、
やさしい日本語を翻訳した学生さんの感想を含めて、お話を伺いました。


薬袋 奈美子(みない・なみこ)

日本女子大学家政学部住居学科 薬袋奈美子 教授

日本女子大学 家政学部 住居学科 教授

日本女子大学家政学部住居学科を卒業後、東京都立大学大学院工学研究科建築建設工学専攻修士課程・博士課程修了。
日本学術振興会特別研究員(DC2)(PD)、東洋大学国際共生社会研究センター研究助手、福井大学工学部建築建設工学科講師を経て現職。

住環境計画、住宅政策、住居管理、住居論等を担当。生活者の視点で住環境を分析し、より良くするための研究・活動を行っている。

日本女子大学 家政学部 住居学科 薬袋奈美子研究室 地域居住ラボ CALL とは?

“住む人が主役になって、より良い住まいとその環境を築く”という視点をベースに、より良い“地域居住”のための研究を行っている。
活動としては、生田緑地や雑司ヶ谷の研究、東日本大震災の被災地(福島県いわき市 豊間)の支援等。

薬袋研究所 地域居住ラボ


※上の画像をクリックすると、研究室の公式サイトへとびます。

※聞き手:「ダンクのやさしい日本語プロジェクト」 メンバー 森 順一郎・千葉宮子

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あえて「住居」にこだわった住居学

———まず、薬袋研究室の主な研究テーマについて教えていただけますか?

<薬袋教授>
基本的には世の中の建築学科と似たような内容の研究をしています。私たちは、あえて「住居学」と呼んでいますが。

なぜ「建築」ではなく「住居」なのかというと、生活者の視点で住生活に関する問題を分析して、住まいづくり・街づくりの専門家を育てようという理由からなんです。
あとは、他の大学の建築学科と差別化するという意味で「住居」という言葉を使っています。

その中でも、私の研究室では都市計画や街づくりを中心に研究・教育をしています。
住民参加型の街づくりへの協力、お手伝いをすることが多いですね。

例えば、大学近くの雑司ヶ谷では、長年にわたって住民参加の街づくりを行ってきました。
その中の一環で生まれた防災公園の管理運営について、住民の方と一緒に考えたりしています。

冊子「ぞうしガヤガヤたんけん」は、地域住民の方から、大学生がどういう視点でこの街を見ているのかを知りたい、という声をきっかけに制作しました。

冊子「ぞうしガヤガヤたんけん」
冊子「ぞうしガヤガヤたんけん」

学生の目で見た雑司ヶ谷の魅力を発信して、地域との関係性を作っています。

■ご興味を持たれた方は、以下の画像をクリックしてください。
いままでのラインナップをダウンロードもできます↓

Screenshot of mcm-www.jwu.ac.jp

海外の方にも、日本の古民家や集落の良さを知って欲しい

<薬袋教授>
そうした取り組みの中のひとつが、生田緑地の民家園をテーマにした冊子制作です。今回ダンクさんに、やさしい日本語の添削をお願いしたものです。
(民家園とは、日本の古民家を中心に屋外に展示した博物館のこと。今回ご依頼いただいたのは、川崎市立日本民家園のもの)

古民家や伝統的な集落って災害への備えとしてすごく賢く作られているんです。東日本大震災の被災地でも古くからある集落は意外と被害を受けていなかった。
ですから、災害が起こって被害を受ける前に、防災について考えてもらいたい、という思いから民家園をテーマにしたんです。

民家園に移築される前の古民家はどんな作りだったのか、民家園に訪れた方が想像できるような冊子を作ろう、というのが始まりです。

この冊子を海外の方にも見ていただいて、日本の英知を知ってもらいたい、という思いも同時にあったので、やさしい日本語版を作りました。

——海外の方にも日本の伝統文化を知ってもらおう、という主旨だったのですね。

そうですね。伝統文化は見えやすいものもありますが、集落の作り方や立地の仕方ってやっぱりパッと見てわかるようなことじゃない。
古い建物を見て「ああいいね」とはなるでしょうけど、その背景とか使われた技術とかも知ってもらえたらな、という思いで作りました。

ご興味を持たれた方は、以下の画像をクリックしてください。
やさしい日本語版のPDFをご覧いただけたり、ダウンロードもできます

薬袋研究室 地域居住ラボ 「生田でインバウンド~生田緑地の魅力発信」(令和3年度)

薬袋研究所 大学・地域連携事業

民家園だけでなく、生田緑地の魅力を知ることができます。

 

やさしい日本語=簡単な日本語 というわけではない

--------ここで民家園のやさしい日本語の翻訳に携わった学生さんも加わって、やさしい日本語版を作ってみた感想を聞いてみました。
多くの学生さんが、「やさしい日本語は難しい」という感想を持ったようですが、「なるほど」と思う面白い意見もあったので、いただいた声をいくつか紹介します。

日本女子大学家政学部住居学科 薬袋奈美子研究室 生徒
学生さん

「やさしい日本語」って小さい子どもにわかるように書く、という感覚で書いていました。
ダンクさんの添削で「漢字で書いた方がいい」とあって、そういう視点は自分の中になかったです。
確かに中国の方だったらそのほうが読みやすいのかなと思いました。

ダンク森

日本語を学んでいる方は漢字も含めて学ぶので、
漢字がないと逆に読みづらいことがあるようです。

学生さん

自分たちは、まず英語でこの単語を表現したらどうなるのかと考えて、
それを日本語に直した方が伝わりやすいのかなと思いました。

ダンク森

確かに文法自体は、日本語より英語に似ている言語が多いですよね。
一度英語にするのはいいかもしれません。ダンクでも参考にします!

学生さん

「これまで」という単語を「いままで」に直す、というダンクさんの添削があって、
その理由が「これまで」だと、どこを指すかわからないということでした。
なかなか言い回しの変え方は難しいなと思いました。

ダンク森

単語を単純に書き換えるというより、前後の文脈を考えて変えた方がわかりやすいですね。
でも確かに難しいですよね。

日本女子大学家政学部住居学科 薬袋奈美子研究室 生徒

みなさん苦労されていたようですが、とてもよい冊子ができたのではないかと思います。
こちらこそ関わらせていただき、ありがとうございました。

やさしい日本語が求められるのはこれから

--------ここからは住居学という観点から、日本人と日本に住む外国人双方にとって、住みよい街づくりとは何か、についてお話を伺いました。
やさしい日本語が果たす役割についてもお話を伺っています。

———日常生活や学校生活の中で、やさしい日本語があるといいなと感じるシーンはありますか。

<薬袋教授>
大学院には中国人の留学生が多いですが、通常の入試を受けて入学した学生たちなので、日本語は堪能なんです。
東京オリンピックのような、世界中から外国人が訪日するようなことがあれば、日本語が少しだけできる、みたいな方々と街中で会うこともあったかもしれませんが。
やさしい日本語が必要になっていくのはきっとこれからなのかなと感じています。

———今後、外国人の受け入れが緩和されて、英語を母語としないアジア圏の方も増えていくと、やさしい日本語が活きるシーンも出てきそうですね。

<学生さん>
やさしい日本語が活きるシーンは、まだ日本語習い始めの段階が多いのかな、と思います。
大学だと日本語を十分に話せる外国人が多いので、未就学児や小学校の方が使う場面が多いのかな。

———在留外国人にとって住みやすい街、という視点で考えたとき、どのような環境づくりが必要だと思いますか。

<学生さん>
同郷の人たちがバラけて住んでしまうと、その地域の方のコミュニティーが形成されにくいと思います。
例えば、横浜中華街みたいに、同じ国の人が集まるようにしたら、その国の情報も交換できるし、難しい日本の制度とかも情報交換できる。
そうやって街が作られていくっていうのは、いいことなんじゃないかなと思いますね。

安心して「立ち話」ができる街づくりを

———文化の異なる外国人と共生するうえで、街づくりに必要な視点は何になると思いますか?

<薬袋教授>
特にそこを意識しているわけではないですが、どうやって外国人に日本の文化を理解してもらうかは重要だと思います。
例えばゴミの出し方など、各地域には生活のルールがあります。
そこには何かしらの理由があって、ルールができている。
ですから、周りの日本人が、外国人に生活のルールを教えてあげる関係性が大事かなと思います。

私の分野でいうと、ちょうど今「道路を生活空間化する」という研究をしています。
日本だと「道路で遊んではいけません」という教育をしますよね。
ですが、海外では住宅地内の道路で子供が遊ぶことを優先するので、
車はゆっくり走る、というような交通のルールができてくる。

そうすると、みんなが外出しやすくなるから、ご近所のコミュニケーションが生まれます。
暮らしのルールや制度って役所に行けば教えてくれるかもしれませんが、生活って多様なので行政に任せることもできない。

何気ないコミュニケーションの中で「なるほど、そういうふうにするのか」と、生活ルールを知ることになると思うんです。
生活情報を収集する手段として、立ち話がしやすい街づくりが必要だと思います。
子供同士が家の前で遊んで、お母さん同士が仲良くなっていく、そういう街をつくることができたらいいなと思いますね。

学校教育の中で、やさしい日本語を学ぶ

———何気ないコミュニケーションって大切ですね。

<薬袋教授>
やさしい日本語の視点でいうと、外国人にとって日本語は何が難しいのか、そのあたりを整理して、やさしくするのがやさしい日本語だと思います。
なので、学校教育の中でやさしい日本語を学ぶ機会があれば、外国人と会話するときのコツみたいなことがわかるんです。

———なるほど。

私が、日本に来た外国人とコミュニケーションする中で感じるのは、辞書に出ている単語の訳ってすごく限定的なんです。
実際の日常生活ではちょっと特殊な使い方をする言葉って多いですよね。

そうすると意外と会話が通じなくて、かと言って言い換える言葉もなかなか思いつかない。
そうなると何となく会話が面倒になってきて、コミュニケーション不足になる、という残念なことが起きる気がしています。

外国人の方にとってわかりやすい日本語ってこういうものです、というのを日本人が分かれば、外国人の方も暮らしやすくなるはずです。
そのきっかけとして、やさしい日本語は大切なんだろうなと思います。

日本女子大学家政学部住居学科 薬袋奈美子研究室
日本女子大学家政学部住居学科 薬袋奈美子研究室のみなさん

本日はありがとうございました。今回新たな発見をさせていただきました。
ぜひ今後も、やさしい日本語に触れていただき、さまざまな情報を発信していってください。

成瀬記念館のご紹介

「成瀬記念館」で、創立者成瀬仁蔵氏の生涯を通じて、日本女子大学の歴史を知る

 日本女子大学・目白キャンパスの正門から入ってすぐ左手にある、赤い煉瓦タイルの建物が成瀬記念館です。
 大学での学びの背景を知るため、取材前に見学させていただきました。

 1984(昭和59)年竣工の、赤い煉瓦タイルが特徴のロマネスク※調の建物。※中世西ヨーロッパの建築様式

 館内では、日本女子大学の創立者である成瀬仁蔵氏の生涯と共にゆかりの品々が展示されており、日本女子大学の歴史を深く知ることができます。

 創立当時は学問として確立されていなかった住居学が発展していく様子を、授業で使用された教科書や生徒のノートを通じて感じ取ることができます。


※「日本女子大学の授業ー住居学教育」展は7月2日(土)まで開催

インタビュアー

森 順一郎
株式会社ダンク 「やさしい日本語プロジェクト」リーダー
1997年株式会社ダンク入社。流通チラシの校正校閲やスケジュールを管理する進行管理業務を担当。2018年やさしい日本語の存在を知り、ダンクが培ってきた編集ノウハウとの親和性を感じ活動を始める。

・2021年度 多文化共生コーディネーター研修 修了
・TBSラジオ『人権TODAY』に出演 『やさしい日本語』の意義と可能性について説明
・都庁主催『やさ日フォーラム』に講師として登壇~デザインとやさしい日本語を組み合わせた新たな手法を紹介
・文京区福祉協議会「フミコム」主催オンラインイベント『フミコムCafe』に登壇

森順一郎による「やさしい日本語研修」の詳細はこちら

森順一郎インタビューはこちら

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ダンクが取り組むやさしい日本語の書き換えノウハウを、体系的に整理し、重要ポイントをまとめたマニュアルを制作しました。
また、実際に行った業務や各自治体・団体等の例を参考に『言い換えリスト』もまとめました。

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